木と鉄骨が織りなす、光と共に楽しむ場鳥取ユニバーサルスポーツセンター ノバリア


体を動かすことを楽しんでいる人々の風景が見える、開かれた体育館。
正方形の空間を活かし、光を取り入れた屋根の構造を実現。

Photo : SATOH PHOTO 
Text : Kana Tanabe

INTERVIEW

PRIMEの小谷野直幸さんにお聞きしました

この施設で目指したものは?
目指したのは、開かれた体育館です。壁に囲われて、重く大きな扉を開けないと中の様子がわからない体育館ではなく、建築に入ると、障がいの有無に関わらず、体を動かすことを楽しんでいる人々の風景が見える体育館を目指しました。先入観が邪魔をすることがあるので、普段は計画の最初の段階からこれを目指す!ということは少ないのですが、今回は開かれた体育館を目指して、ブレることなくそれを創れたという、我々としては珍しくストレートなプロセスだったと思います。スポーツ広場という名が付きましたが、広場のように開かれた体育館を提案し、その価値や意味を関係者の方々と共有できたことが大きかったと思っています。
1番こだわったところは?
体育館としては決して大きくない、バスケットボール半面ほどのスポーツ広場ですが、それでも18m×18m程度の大空間になります。このスポーツ広場の屋根の構造と光の入れ方が設計としては一番こだわったところです。普通、体育館のような大空間は、長方形をしていることがほとんどで、スパンの短い方向に梁を掛け並べることが多いのですが、今回は正方形の空間なので、正方形でしか出来ない、正方形のメリットを活かせる屋根の構造を構造設計者と一緒に考えました。様々な可能性を検討する中で、大空間をつくるのに適した鉄骨とCLTという木質パネルを組み合わせた構造体を考えました。この構造体の厚さに合わせて、四周に半透明のポリカーボネイトの採光板を嵌め込んで、光を取り入れています。

大変だったことはなんですか?
やはり、前例のないこのスポーツ広場の屋根の構造を実現するのが大変でした。正方形のグリッドを組んでいく鉄骨の接合部や鉄骨とCLTをどう留めるかなどの詳細な検討を、施工の手順なども考慮しながら詰めていく作業には時間がかかりました。鉄と木の組み合わせですから、鉄骨業者と大工さんとの調整も必要で、加工の精度も合わせないとうまくジョイントできません。出来てしまうと苦労の影もなく天井に浮いて見えるこの構造ですが、施工中は、スポーツ広場全体にびっしりと足場が組まれ、ミリ単位での施工精度を実現するために相当な苦労をしています。こうしたチャレンジは、施工者の協力なしでは実現しません。この構造を実現したいという思いを建設会社と共有できたことは、本当に幸せなことだと思います。
どういう方や組織がどのように関わったプロジェクトなのでしょうか?
このプロジェクトは、鳥取県と日本財団の共同事業の一環で行われた事業で、高齢者や障がい者の生活を民間レベルで支えていく地方創生のモデルとして取り組まれています。
具体的には、鳥取県が建設地である県立布勢運動公園内の敷地の提供と計画のサポートを行い、日本財団が建設費の助成、鳥取県障がい者スポーツ協会が建築主及び運営主体となるプロジェクトです。テラスポ鶴舞でも経験していることですが、公共事業と民間事業の中間のような位置づけで、我々のクライアントとしては障がい者スポーツ協会になりますが、3団体のつなぎ役のような役割を担うことが求められました。設計とは違う意味で、これはなかなか大変でした。しかし、そうした関わりがあったからこそ、この施設がどのような役割を果たしたらいいのかといった、プロジェクトの最初の段階から関わることができたし、建築に対する信頼も得られたのだと思います。
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